職業倫理シリーズ Final
8.その他の行為基準
基準8(1) 会員は、証券分析業務を行う場合には、すべての顧客を公平に取り扱うようにしなければならない。
〔趣旨〕
証券アナリストの社会的信頼性を確保するために設けられた規定。
〔留意点〕
公平に:獲得できる対価等に関係なくすべての人を平等にという意味ではなく、例えば、全く同じような状況の人が2人いた場合、両者に対して平等にという意味である。
〔事例〕
・ 会員が10社の顧客を抱えているが、10社のうち3社は担当者が気に入らないということで、情報の開示を故意に遅らせている状況。
・ ファンド管理者の会員が3つのファンドのマネジメントをしており、そのうち2つについて積極的に投資売買を繰り返し、もう1つは怠慢により、基本的に内容変更をしない場合。
基準8(2) 会員は、自己の証券保有や個人的取引によって、公正かつ客観的な証券分析業務の遂行を阻害しないよう注意しなければならない。
〔趣旨〕
基準6(1)の規定により、会員は公正かつ客観的な証券分析業務を阻害すると合理的に判断される事項を顧客に開示する義務があるが、これは開示すれば何をやっても許されるという規定ではない。そこで、開示の有無に関わらず、自己の証券保有や個人取引により顧客のために行われるべき証券分析業務をゆがめることがあってはならないため、基準5(1)、基準2(3)、基準3(1)イ(イ)とは別に、確認的な規定として存在。
〔留意点〕
自己の証券保有や個人的取引:実質的保有より広く、友人や親類などの取引も含む概念である。
〔事例〕
・ 会員がA会社のレーティングを「中立」から「買い」に変更する前にA社株式を購入した後、誇張した表現で書いたレポートを発表し、株価が大幅に上昇したので株式を売却した場合。
・ 義理の母の申し付けにより、他の顧客に優先して、重要な知りえた情報を伝えている場合。
基準8(3) 会員は、証券分析業務を行う場合には、証券の発行者等との関係において、独立性と客観性を保持するよう注意し、公正な判断を下さなければならない。
〔趣旨〕
証券アナリストは、立場上、発行会社と直接、間接に様々な関係ないし接触の機会を持つことになるが、そうした関係によって公正な判断が阻害されないよう、常に独立性と客観性の保持に注意すべきであるという規定。
〔事例〕
・ 会員が行う調査レポートの対象会社から、様々な接待を受け、当該会社だけは株価にマイナスの材料が存在していても全く取り上げない状況。
基準8(4) 会員は、証券分析業務を行う場合には、当該業務の依頼者である顧客に関し知り得た秘密を他に漏らしてはならない。
〔趣旨〕
顧客が会員を信頼して、自己の財産状況などを開示するのは、会員が専門家であり、他に当該情報を漏洩しないことが前提となっている。そのため、当該信用を失墜する行為を防止するために規定。
〔事例〕
・ 保険業を営む友人に自己の持つ顧客の情報を横流しする行為。
基準8(5) 会員は、検定会員等の会員称号を使用する場合には、称号の権威と信頼性を保持するよう良識ある方法を用いなければならない。
〔趣旨〕
称号の使用を誤って利用された場合には、会員に対する信頼性を失いかねないため、称号の使用について慎重になるべきとする規定。
〔事例〕
・ 検定会員は国家試験に基づく資格ではなく、あくまでも専門職業団体の自主努力に基づく資格であるのに、あたかも国家資格であるとの説明をした場合。
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